一口に「降格」といっても…

最近のご相談で「降格」に関するご相談もあったので、今日はこれをのべます。

「降格」とひとくくりで言っても、二種類あります。
「職級」の降格と、「職能」の降格です。

職級というのは、主任とか係長とか課長とか部長とか組織の中の位置付けとして自分がどこになるのかを示すものです。この「職級」の降格の場合には、誰をどのポストに置くかということは企業側に大きな人事権裁量が認められますから、基本的には争うことは難しいです。

しかし、「職能」に関する降格は話が別です。「職能」とは、職業上の能力のことで、典型的には警察組織で言うところの巡査部長とか警部補とか警視とかいうものです。職能は現時点でその能力があるからその等級になっているわけで、普通能力があったのになくなることはありませんから、原則企業側の裁量権は及びません。そして、職能の降格は多くの場合減給など労働条件の根本に関する部分が悪くなることを意味するところ、労働条件の変更は原則労働者と使用者の合意がないとできませんから、やはり企業の裁量権の話にはなりません。もっとも、懲戒処分での職能降格の規定だったり、職能を維持するための資格維持要件などが就業規則に明記されている場合には、そういう範囲での降格があるということが合意の内容になっていると考えられますから、その場合には合理的な理由があるものとして降格は適法なものとなります。

何が言いたいかといえば、もし企業から(就業規則に明記がないのに)「君は今の職能にふさわしくない人間だから、降格させるね」といわれたら、それは違法ですから、弁護士のところに相談に行った方がいいということです。対して、「君は課長の器ではないから、平社員に戻すね」と言われたとしても、法的には対抗することが難しいことになります。

職能の降格について争う場合には、労働審判や民事訴訟によって、以前の職能等級の地位であることの確認請求や降格処分によって減収してしまった分の未払い賃金請求をしていくことになります。

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